厳寒祖母登山



12月23日
我々は大分、宮崎県境にある祖母山に向かった。
祖母山は九州で一番厳しい山と言われている。
我々はその祖母山を初冬山の場とした。

準備は入念を重ねた。
アイゼン(靴の裏につける鉄の爪。滑らないためにつける。)、やスパッツ(膝下から靴までかけて着ける布。雪や石が靴に入るのを防ぐ。)を購入した。


前日の夜1900に自宅を出発。
一路、多比良港へ。
しかし、最終のフェリーはすでに出港。
2100が最終だと思っていたのだがどうやら日曜だけらしい。
今日は土曜日。
土日ともに2100の便があるのと勘違いした。
諫早まで戻り、高速で熊本に向かう。
高速を降り、57号を阿蘇方面に向かう。
峠には雪が積もり気分も高まる。
やがて大分県に入り、国道をはずれる。
細く、くねった道をしばらく走り登山口に着く。
0200。仮眠をとる。


0600起床、準備をし出発する。
すぐに山の全容が見える。

山の半分は白く雪化粧をしている。
山は高くそびえ、我々の前に壁のように立ちはだかっている。
大げさにではなく本当にそう感じた。

美しい渓谷に沿いしばらく歩く。

道は山に入り林の中を歩く。

今日の登山口から山頂までの標高差は1100m。
そうとうなものである。
それを証明するかのようにきつい登りが続く。

地面には至る所に霜柱が立つ。
気温は寒いが、きつい登りなので汗が吹き出る。
滝は凍り、太いつららがぶら下がっている。
一面雪になり、滑り始めたのでアイゼンを着ける。

山頂のある尾根についたのは1020であった。


ここからは、きつい登りはない。
すでに標高は1550mである。
残り、200mを尾根伝いにゆっくり登ることになる。





尾根の至る所にある展望台(早い話が足下が崖になっているところ)は素晴らしい景観を提供してくれた。


山頂を見るとガスがかかっている。
西からも雲がやってくる。
ホワイトアウトしては大変なので先を急ぐ。

山頂に近づくほど、ガスが濃くなる。
地図上では山頂まであと、200mほど、しかしここから一時間以上かかると地図には書いてある。
少し進むとその理由が目の前にあった。

目の前にそびえ立つ岩肌。
どうやって登るのであろう。

岩場に近づくと梯子やロープがつけてある。
これを使って登るようだ。
岩場は凍り付き少ない足場には雪が積もる。
所々では岩を包むかのように氷が張っている。
ちなみに、足下は崖である。
落ちたら死ぬ。

慎重にはしごをのぼる。
鉄の梯子をつかむ。
その瞬間手袋が梯子に凍り付く。
バリっとはがし一歩進む。
はしごを登りきり次の梯子に乗り換える。
次の梯子まで横に5mほど移動しなければいけない。
足場は幅が10cmもない。
もちろんほぼ垂直の岩肌である。
足場に積もった雪がそこに本当に足場があるかどうかわからなくしている。
落ちれば死ぬ。
慎重に足を進める。

新しい梯子にとりつき登る。
た新しい梯子への移動。
梯子ではなく不安定なロープの時もある。
最後は梯子もロープもない崖を横に10mほど移動する。
無事、通過したが相当怖かった。
人生で一番怖い瞬間であった。

登り切るとそこは山頂。


残念ながら、ガスが有り何も見えない。
山頂には別の初心者コースから来た中高年の登山者が10人ほどいた。

時間が遅れていたので降り始める。

頂上から少し降りたところにある山小屋でおにぎりを食べる。
気温は-5度。最低気温は-11度だったらしい。


山登りの下りは辛い。
何の楽しみもない。
六時間かけて登った山を二時間で下りた。
振り返るとそのには今までいた山がそびえていた。
日が沈み黒い山塊が青空にそびえていた。



1600無事に下山することができた。


素晴らしい一日であった。
もう一度雪山に行きたい。